月間おもしろブック大賞 18/4~10

 

ニート

 

 

4月

貨幣論岩井克人ちくま学芸文庫

貨幣論 (ちくま学芸文庫)

貨幣論 (ちくま学芸文庫)

 

貨幣を貨幣として今ここでひきうけてもらうためには、貨幣を貨幣としてひきうけてくれる人間が無限の未来まで存在しつづけることが期待されていなければならない。無限の未来にむけての期待のみが、今ここでの貨幣の貨幣としての価値を支えている。(p198)

 むかし国語の教科書で読んで以来気になっていて2年前に買ったものの、ずっと積んでいたのを消化したら存外面白かった。マルクスの『資本論』中で論じられた価値形態論を追いながら、貨幣とはなんぞやという謎に迫る本。上記の引用文がラノベという感じでかっこいい。

 

 

5月

世論/W.リップマン/岩波文庫

世論〈上〉 (岩波文庫)

世論〈上〉 (岩波文庫)

 

 あ~はいはいそうですね~~と読んだが書かれたの100年前(1922年)でビビる。特に11章の人間化したステレオタイプの話はやたら今風に感じるし、人間変わらんなという気持ちになる。上巻巻末に大学時代の同級生が著者のリップマンをベタ褒めした詩が載っているので腐女子のみなさんにもおすすめです。

 

 

6月

 該当なし

 

 

7月

動物の賢さがわかるほど人間は賢いのか/フランス・ドゥ・ヴァール/紀伊國屋書店

動物の賢さがわかるほど人間は賢いのか

動物の賢さがわかるほど人間は賢いのか

 

 人間の尺度で動物を測るなという話。たまたま少し前にユクスキュルの『生物から見た世界』を読んでいたので点が線になった感じがして良かった。生物学をやっていると動物が機械的に見えてくるというのはありがちな話で、そこから中庸にバランスできるこの本は貴重。

 

 

8月

想像の共同体/ベネディクト・アンダーソン/書籍工房早山

定本 想像の共同体―ナショナリズムの起源と流行 (社会科学の冒険 2-4)

定本 想像の共同体―ナショナリズムの起源と流行 (社会科学の冒険 2-4)

 

 ナショナリズムの起こりと進行を書いた一冊。印刷技術の発達が国民意識の端緒となった話は蒙が啓かれるし、クレオールの巡礼の話はエモい。一見とっつきにくそうだが内容が面白くてするする読めるのは『利己的な遺伝子』でも体験したが、本当に良い本に出会えたという気がして嬉しくなる。どうでもいいけど”Ⅸ 歴史の天使”めちゃかっこいい。

 

 

9月

やわらかな遺伝子/マット・リドレー/紀伊国屋書店

やわらかな遺伝子

やわらかな遺伝子

 

 生まれか育ちか、自分が何によって形成されているのかは人間だれしも気になる問題だが、著者の答えは”生まれから育ちへ”というもの。遺伝子が可能性を提供し、環境がそれを利用するという世界観は直感的にも理解しやすい。具体的な事例も刺激的なものが多く飽きずに読み進められる。各章で取り上げた生物学著名人の黒歴史(?)を挙げる章末コラムも性格、悪。となり良い。

 

 

10月

フルハウス 生命の全容/スティーブン・ジェイ・グールド/早川書房

フルハウス 生命の全容―四割打者の絶滅と進化の逆説

フルハウス 生命の全容―四割打者の絶滅と進化の逆説

 

 これまでグールドは『八匹の子豚』などのエッセイ集を読んでいただけだったのでただの話が上手い生物学蘊蓄おじさんというイメージしかなかったが、この本は一貫した理論書としてかなり良かった。この本の骨子は分布の裾を単体として見るなというもの。なぜ昔はいた4割打者を今は見なくなったのか?それは投打に置いて選手の質の分散が縮小したためである、とグールドは言う。4割打者の消滅は野球の衰退ではなくむしろ発展を示すものだという見方は腑に落ちるし面白い。おすすめの一冊。

 

 

 

おまけ

積み本大賞

 微分積分30講/志賀浩二/朝倉書店

微分・積分30講 (数学30講シリーズ)

微分・積分30講 (数学30講シリーズ)

 

 俺が数学をやろうと思い立った時はまず間違いなく気の迷いか極度の酩酊状態かその両方なのだが、今回も気の迷いだった。本自体はかなり良本という雰囲気が感じられるが、感じられるが数学一生やりたくねぇ~~~。あと13回くらい気が迷ったら読破できると思うのでとにかく混乱していきたい。